肥満猫のダイエット|減量中の餌の量の計算と注意点

公開日: 2026/6/20

「うちの猫、太ってきたかも」と思いながら、どれだけ量を減らせばいいのか分からず、なんとなく少なめにしているだけ——そんな方は多いのではないでしょうか。猫の減量は正しい体重を使って正しい係数で計算することが重要で、感覚でやると過剰に絞りすぎたり、逆にほとんど変わらない量になったりします。この記事では、肥満猫のダイエット給餌量の計算方法と、減量を安全に進めるための注意点を具体的な数字で解説します。


肥満が猫にもたらすリスク

猫の肥満は見た目の問題にとどまらず、さまざまな健康上の負担につながることが知られています。体重が増えると関節や骨格への負荷が増し、動くことをより嫌がるようになる悪循環が生まれやすくなります。また、インスリンの働きに影響が出て血糖コントロールに関わる問題が起きやすくなったり、体内の脂肪が臓器周辺に蓄積して肝臓や心臓への負担につながったりするリスクも指摘されています。

「少しぽっちゃりしてる方がかわいい」という気持ちはよく分かります。ただ、猫は体重が10〜20%超過しただけでも健康への影響が出やすい動物です。早めに気づいて少しずつ修正するほうが、猫への負担も少なくなります。


減量計算の「落とし穴」——現在体重で計算してはいけない

ここが最も重要なポイントです。

肥満猫の給餌量を減らすとき、多くの方が「現在の体重」をもとに減量中の係数を掛けて計算してしまいます。しかしこれは誤りです。

減量中の計算は「目標(理想)体重」で行います。

なぜなら、現在の体重で計算すると「今の肥満した体格を維持するためのカロリー×係数」になってしまい、本来より多いカロリーを与え続けることになるからです。目標体重は一般的に「ろっ骨を少し触れる程度のしなやかな体型」が目安です。判断に迷う場合は動物病院でボディコンディションスコア(BCS)を評価してもらうのが確実です。

計算式の詳しい仕組みについては猫の餌の量の計算方法も参照してください。


減量中の係数は 0.8

猫のライフステージ係数の中で「減量中」に使う値は 0.8 です。

計算式は次のとおりです。

RER = 70 × 目標体重(kg)^0.75

DER(1日の必要カロリー) = RER × 0.8(小数点以下は四捨五入)

給餌量(g) = DER × 100 ÷ フードのkcal/100g(四捨五入)

猫ごはん計算機では「ライフステージ」で「減量中」を選び、体重欄に目標(理想)体重を入力することで、この計算を自動で行えます。


理想体重別 早見表(ドライフード 400kcal/100g換算)

下の表は理想体重に対して係数0.8を掛けた1日の目安です。現在の体重ではなく、目指すべき体重の行を参照してください。

理想体重必要カロリー(DER)グラム数(400kcal/100g)
3.5kg143kcal36g
4.0kg158kcal40g
4.5kg173kcal43g
5.0kg187kcal47g
5.5kg201kcal50g

使っているフードのカロリーが400kcal/100gと異なる場合は、猫ごはん計算機にフードのkcal/100gを入力して再計算してください。フードのカロリーはフード比較ページでも確認できます。


計算例:現在5.5kgで理想体重4.0kgの猫

「今は5.5kgあるけど、本来4.0kgが適正」という猫の給餌量を計算します。

ステップ1 — 目標体重でRERを求める

RER ≒ 198kcal(70×4.0^0.75)

計算には**4.0kg(理想体重)**を使います。現在の5.5kgは使いません。

ステップ2 — 減量中の係数0.8を掛ける

DER = 198 × 0.8 ≒ 158kcal(四捨五入)

ステップ3 — グラム数に変換する

フードが400kcal/100gなら:

給餌量 = 158 × 100 ÷ 400 = 39.5 → 40g/日

この猫には1日40gが減量時の給餌目安です。もし5.5kgで計算していたとすると早見表では50gになってしまい、10g多く与えることになります。この差が積み重なると減量が進みません。


急激な減量は危険——脂肪肝(肝リピドーシス)に注意

猫のダイエットで絶対に守らなければならない原則が「急激に減らさない」ことです。

猫は急に食事量が減ると、エネルギー不足を補おうと体内の脂肪を急速に動員します。このとき脂肪酸が肝臓に大量に流れ込み、肝臓の処理が追いつかなくなる状態——肝リピドーシス(脂肪肝)——が起きることがあります。食欲が突然落ちた猫や、数日間ほとんど食べていない猫では特にリスクが高く、重篤化すると命にかかわる場合もあります。

人間のダイエットとは異なり、猫は「腹が減っても頑張れる」動物ではありません。急に制限すると体調を崩す可能性があります。

安全な減量ペースの目安は「1か月で体重の1〜2%減」程度です。 4.0kgを目標とした猫なら、週に約40〜80gずつ減っていくイメージです。減りが速すぎると感じたらすぐに量を少し戻し、獣医師に相談してください。


週1回の体重チェックを習慣にする

減量中は体重変化を定期的に追うことが不可欠です。月1回では変化が大きすぎて対応が遅れます。週1回、同じ時間帯に体重を測るのが理想です。

体重計は猫を乗せて計れる赤ちゃん用スケール(1g単位)か、人間用の体重計で「人間だけの体重」と「猫を抱っこした体重」の差を出す方法が使えます。測定値をメモして折れ線グラフにすると傾向が分かりやすくなります。


注意点・よくある失敗

「少し減らせばいい」と感覚で調整する

「昨日より少なめにした」という感覚的な管理では量の変化が曖昧になります。計算で目標カロリーを決め、キッチンスケールで毎回測ることが基本です。1日の総量を朝晩に分けて与える場合も、合計が目標グラム数になっているかを確認してください。

おやつのカロリーを忘れる

おやつや手づくりトッピングのカロリーを無視してフードだけ計算しても意味がありません。おやつを与えている場合は、そのカロリー分をフードから引いた量を給餌してください。減量中はおやつを最小限にするか、カロリーの低いものに変えるのが現実的です。

急に量を半分に切る

「早く痩せてほしい」という気持ちは分かりますが、急激な制限は肝リピドーシスのリスクを高めます。現在の給餌量から週ごとに10〜20%ずつ減らしていき、2〜3週間かけて目標量に近づけるのが安全です。

「計算より食べなかった」を放置する

食欲が急に落ちた場合は、単なる好みの問題ではなく体調不良のサインかもしれません。2日以上ほとんど食べない状態が続く場合は、給餌量の問題より先に動物病院を受診してください。特に脂肪肝のリスクが高い肥満猫では、食欲不振は速やかに対処すべきサインです。

避妊・去勢後に太った猫の係数を混同する

避妊・去勢後に体重が増えた猫の減量計算にも同じく係数0.8を使います。ただし避妊・去勢後はそもそも基礎代謝が下がっているため、手術前と同じ量を与え続けないことが肥満の予防になります。詳しくは避妊・去勢後の体重管理を参照してください。


獣医師への相談が必要なケース

次のような場合は、給餌量を自己判断で変える前に動物病院に相談することをおすすめします。

この記事で示した計算式はあくまで一般的な目安です。個々の猫の体質・既往症・活動量によって適切な給餌量は変わります。特に持病のある猫や高齢猫の減量は、必ず獣医師の監督のもとで行ってください。療法食が処方されている場合は、計算値より獣医師の指示量を優先してください。